シミになりました(汗など)

個別のシミや汚れをそれぞれにあった方法で取り除きます。
  • 油や樹脂の汚れは有機溶剤を、食べ物や汗などは水と洗剤を使って落としますが、両方混じったシミもたくさんあります。
  • 頑固に繊維とくっついているシミは化学的に分解して落とします。
  •  
  • シミの持っている色素が残ったり時間の経過と共に黄色く変色したものは、漂白剤を用いて白くします。その時に地色や柄色も抜けることがありますが、染料で元の色や柄に補正します。

体の生理機能からのシミ

体から出てくる汚れには、垢、皮脂、汗などがあります。

皮膚の新陳代謝によって一番外側の角質層が新しいものに変えられ、皮膚表面全体から毎日剥がれる古い角質細胞。衿や袖口のようにこすられる所に多くつきます。

皮脂

皮膚の表面をおおっている皮脂膜は、皮脂腺から分泌される脂肪性物質で思春期に分泌が多くなり、中年以降に低下します。女性よりも男性に多く、背中や胸に多く分泌されます。汗と混じって皮脂膜となり皮膚を保護する働きをしています。

身体全体にあるエクリン腺からの汗は、大部分が水で、塩類や尿酸、乳酸などがごくわずか含まれています。脇の下など限られた所にあるアポクリン腺から出る汗はたんぱく質や脂質を多く噴くんだ液体で、栄養分が多いため放置しておくと黄色く変化します。

血漿の中に赤血球、白血球、血小板の浮遊しているもので、蛋白質や炭水化物、脂肪塩類などを含んでいます。付着してから長く時間の経ったものや熱が加えられたものは蛋白質が固まり落ちにくくなります。
  

衿汚れ

衿汚れ
皮脂や垢、汗によって染料が退色したもの。上前側を直しています
衿汚れ
下前の黄変した衿ヤケを脱色しました。
衿汚れ
染料で元の色に補正しました
  

袖口汚れ

袖口汚れ
袖口汚れ
右側は汚れを落としています。左側は汚れを落としていません。
袖口汚れ
左側の八掛を広げると汚れがよく見えます。

比翼袖口汚れ
比翼袖口汚れ
左側は汚れを落としています。
  

汗シミ


汗による胸のシミ
汗シミ
汗による黄変シミ。
汗シミ
シミの原因となるものを取り除いて脱色。
汗シミ
染料で元に色に補正しました。変色がした色が濃いので少し黄変が残っています。

襦袢胸シミ
襦袢胸シミ
脇の汗で黄変しました。
襦袢胸シミ
黄変の原因となったものを取り除いて、脱色したあと染料で補正。

帯の色移り
帯の色移り
着物と帯の摩擦により帯の色が着物に移っています。汗をかいた時など生地が湿った時に、よく色移りが起こります。
帯の色移り
右身頃の色移りを脱色して染料で元のように補正しました。

背伏せの色移り
背伏せの色移り
背縫いの黒い縦筋は喪服の背伏せの色が移っています。横に広がっているのは喪服の色が移っています。汗をかいた時など生地が湿った時に、よく色移りが起こります。

放置による変色
放置変色
放置変色
放置変色
※拡大写真を見る
脇や背中の汗を放置したために黄変しました。

汗による黄変・緑青の発生
汗による黄変・緑青
汗をかいたところが黄色く変色して、金彩加工に緑青が発生しました。帯揚げの赤い色移りもあります。
汗による黄変・緑青
黄変と色移り、緑青の処理をして傷んだ金彩加工を描き直しています。緑青の跡が少し黄色く残りました。

着物を着たときは、帯下、胸、衿、袖口等に汗のシミが出ています。長い間正座をしていると膝の後にも汗がたまります。
帯下や、膝の後に強いしわの出ているときは汗をよくかいていると思われます。汗の湿気を吸うと、帯との摩擦できものや帯にスレのでる事があります。又、きものの色や襦袢、腰ひもの色が胴裏に、単衣の背伏せの色が長襦袢に色移りする事があります。汗は丸洗いをしても落ちないので、水と洗剤を使って落とします。

▲このページの上部に戻る